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【読書レビュー】汝の名(明野 照葉)


■あらすじ

三十代の若さで事業に成功し、誰もが憧れる優雅な生活をおくる麻生陶子。
だが、その美貌とは裏腹に、「理想の人生」を手に入れるためには、恋も仕事も計算し尽くす人間だ。
そんな陶子には、彼女を崇拝し奴隷の如く仕える妹の久恵がいた。
しかし、ある日を境に、この奇妙な姉妹関係が崩れ始め、驚愕の事実が明らかになっていく……。


■感想

表紙とあらすじに惹かれて購入した一冊です。
明野 照葉さんの作品は初めて読みます。

本作、女と女の戦いが繰り広げられるわけですが、その戦いが妙に癖になります。
女の戦いが繰り広げられる小説は、割りとイヤミスになる傾向が強いかなと思っていたのですが、個人的に本作は全然そんなことありませんでした。

読後の感想としては、本作はミステリー小説の顔をしたホラー小説で、生身の人間同士が引き起こすホラーだからなぜか読まずにはいられない、という感じ。
好奇心というのか、主人公たちの戦いが圧巻だからなのか、目が離せなくなるんですよね。

理想の人生を送るため、自らを厳しく律して強い意志を輝かせながら生きる陶子。
しかし彼女は、自分の理想を追いかけるためには手段を選ばない悪女でもあります。

そんな陶子とは反対にいつも自分に自信がなく、その割りに何か悪い出来事があればそれは誰かのせいだと考えてしまいがちな久恵。
彼女は献身的な精神が強い反面、自分より立場の弱い者の上に立とうとする悪女でもあります。

まるで対照的な2人。
良い面も悪い面も持ち合わせる2人の悪女が戦うなんて……ほら、もう面白い展開になる気がしてきませんか?

物語の終盤で2人の戦いはひとまずの決着を見せるのですが、それでも完全に勝負が決まったわけではありません。
「この次はどんな戦いをするんだろう?」と続きが読みたくなってしまう、まだこの2人を見ていたいと思わせる、引力のある小説でした。