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【読書レビュー】いなくなった私へ(辻堂 ゆめ)


■あらすじ

人気絶頂のシンガーソングライター・上条梨乃はある朝、渋谷のゴミ捨て場で目を覚ます。
昨夜からの記憶がなく、素顔をさらしているのに誰からも上条梨乃と認識されない状況に戸惑う。
さらに街頭ビジョンには、上条梨乃が自殺したというニュースが流れており……。
梨乃は自分を上条梨乃と認識できる青年・優斗らの力を借り、自らの死について調べだす。
『このミス』大賞優秀賞受賞作!


■感想

辻堂 ゆめさんの作品は初読みとなります。
タイトルとあらすじに惹かれて購入。

一見、記憶喪失もののミステリーかと思いきや、他人からも自分が『自分』だと認識されない不可解な状況に陥った冒頭。
しかもその『自分』は自殺したのだと世間では言われている。

「自分が『自分』だと思い込んでいる他人のパターンもあるか?」なんて想像しながら読み進んでいくと、どうやらそうではないらしい。

ファンタジーというべきか、オカルト要素というべきか。
三者の視点で『輪廻転生』の話が出始め、それが長い時を経て、主人公・上条梨乃のこの不可解な出来事に繋がってくるらしいことが分かってきます。

なぜ、他人が自分を『自分』と認識できないのか。
なぜ、自分を『自分』だと認識できる他人が少数ではあるものの存在するのか。
なぜ、自分は死んでしまったのか。

物語の後半で、それぞれの点が繋がっていく様子が、読んでいて気持ちよかったです。

他人が自分を『自分』として認識できないという孤独な中でも、前を向くことを忘れない主人公・梨乃。
そんな梨乃の理解者となる青年との関係の築き方に青春さを感じ、ミステリーにしては明るく読み進められた一冊でした。