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【読書レビュー】エンディングドレス(蛭田 亜紗子)


■あらすじ

夫に先立たれた麻緒、32歳。
自らも死ぬ準備をするため"死に装束を縫う洋裁教室"に通い始める。
20歳の時に気に入っていた服、15歳の頃に憧れていた服、自己紹介代わりの服…。
ミステリアスな先生による課題をこなす中で、麻緒の記憶の引き出しが開かれていく。
洋裁を通じてバラバラだった心を手繰り寄せた先に待つものは?
「本当の自分」と「これからの自分」を見つける、胸打つ傑作小説。


■感想

蛭田 亜紗子さんの作品は初めて読みます。
エンディングドレス。このタイトルに惹かれて購入しました。

夫に先立たれた主人公の麻緒は32歳。
彼女は夫と愛猫と一緒に柔らかくて温かな閉じた世界で幸せに浸っていましたが、今では1人きりとなってしまいました。

辛い。死にたい。
そんな明確な言葉を麻緒は口にはしませんが、言動のひとつひとつにその想いが滲み出ていて。
まさに夫と愛猫の後を追おうと準備している最中、麻緒はエンディングドレスを縫うという洋裁教室と出会います。

文字通り、自分の死に装束を縫うつもりで通い出した教室。
そこで出会ったミステリアスな先生や生徒のおばあさんたちと距離を置きながら、麻緒はエンディングドレスを縫うまでの洋裁の課題をこなしていきます。

課題をこなす中で、少しずつ思い出されていく亡き夫との思い出。

夫は自分の中に厄介な病魔が巣食っていると知って孤独に生きてきたにも関わらず、麻緒と出会ったときに結婚を直感し、麻緒を愛さずにはいられませんでした。

いつか来ると分かっていた別れ。
だからこそ未来を繋ごうと待ち望んでいた新しい命。

ひとつひとつを記憶を思い出していく麻緒は、時に幸せに浸りながら、時に絶望しながら。
自分の死後は麻緒にどう生きてほしいか願っていた夫の想いを知り、麻緒は少しずつ前を向き始めます。

誰にでも訪れる『死』とのひとつの向き合い方を、優しく教えてくれるような作品でした。