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【読書レビュー】ミドリのミ(吉川 トリコ)


■あらすじ

重田ミドリは小学3年生の女の子。
一緒に暮らすのは父親の広とその恋人、源三である。
母親の貴美子は広の心境の変化についていけず、離婚話もあまり進まない。
だが、進まない理由はそれだけではなく――。
それぞれの理想の"かたち"を追い求め、もがくミドリたち。
彼女たちに訪れるのは一体どんな結末なのか。


■感想

あらすじの内容と表紙のイラストのギャップに惹かれて購入した本。
吉川 トリコさんの本は初めて読みます。

LGBTの話をベースに『ふつう』という世間で『常識』と呼ばれるもの(多数決の多数の意見が常識と定められるもの)に縛られ、その一方的に押し付けられる価値観の中で生きながら自分にとっての『ふつう(理想)』を追い求めるストーリーとなっています。

吉川さんの文体はやわらかく、一見するとほのぼのとした物語を読んでいる気持ちになります。
しかし本作で書かれていることは残念ながらどこにでもある、目に見えたり見えなかったりする、意識的や無意識的に生まれている差別の話。
じわじわと、でも確実に、いい意味で読んだ人に何かしらの傷跡を残す内容となっていると思います。

本作の結末は、ハッピーエンドやバッドエンドなど、そんなもので片付くものではありません。
わたしたちの生きている現実と同じように、何かを乗り越えても終わりなどなく、死ぬそのときまでどうにかして生きていく。
そんな風な書き方で終わりを迎えています。

はっきりとした結末ではないので多少の好き嫌いはありそうですが、これから登場人物たちがどうなるかを想像するのが楽しめる方には、おもしろく感じる結末かもしれませんね。

読みやすい本だったので、気になった方はぜひ読んでみていただければと思います。

吉川 トリコさんの他の作品も気になるなあ。