【読書レビュー】梟の一族(福田 和代)
■あらすじ
眠らないことに加え、常人離れした身体能力を持つ梟の一族。
彼らは歴史の陰で大きな役割を果たしてきた事実を秘密にして、身を隠すように生活していた。
集落が何者かに襲撃され、全員が消えてしまうまでは。
ひとり残されてしまった史奈は、一族の生存を信じて、また、今まで明かされなかった己のルーツに関する真実を知るために、襲撃者と戦い続ける。
忍者 × サイエンスエンターテインメント!!
■感想
福田 和代さんの作品は3冊目になります(たぶん)。
不眠の強靭な身体能力を持つ梟の一族。
うーん、わたしの厨二病心をくすぐってくる設定です。笑
古くからの教えを守って、限界集落の唯一の子どもとして祖母と生活をしていた史奈。
ある夜、何者かの襲撃を受けて、犠牲となった1人の住民以外は全員消え去ってしまいます。
そうして唯一逃げのびた史奈は跡形もなく燃やし尽くされた集落を見て、仲間を救うために旅立ちます。
そうして突き止めた仲間の居場所は、とある感染症研究所。
かつて両親と一緒に集落を出て行った同年代の仲間とともに研究所に乗り込んだ史奈は、そこで集落の仲間たちと再会しますが、彼らは自らの意思で研究所から出ないと言い張るのでした。
梟の一族とは何なのか。
なぜ『研究所』で囲われているのか。
なぜ、他の梟の一族たちは研究所から逃げ出さないのか。
梟の一族の謎が『科学』へと結びつき、物語の終盤に向けて事件の全貌が明らかになるのですが、物語の展開にわくわくが止まりません。
物語の中で梟の一族が次世代へと繋がるシーンが描かれていますが、それに相応しく、物語で活躍する史奈率いる若者たちの姿がずっと見ていられます。
ちなみにこの梟の一族は、2作目、3作目と続編が出ているようなので、機会があればぜひ読んでみたいです。
派手なアクションシーンはないけれど、ヒーローが暗躍するような物語がお好きな方にお勧めできる作品でした。
【読書レビュー】エンディングドレス(蛭田 亜紗子)
■あらすじ
夫に先立たれた麻緒、32歳。
自らも死ぬ準備をするため"死に装束を縫う洋裁教室"に通い始める。
20歳の時に気に入っていた服、15歳の頃に憧れていた服、自己紹介代わりの服…。
ミステリアスな先生による課題をこなす中で、麻緒の記憶の引き出しが開かれていく。
洋裁を通じてバラバラだった心を手繰り寄せた先に待つものは?
「本当の自分」と「これからの自分」を見つける、胸打つ傑作小説。
■感想
蛭田 亜紗子さんの作品は初めて読みます。
エンディングドレス。このタイトルに惹かれて購入しました。
夫に先立たれた主人公の麻緒は32歳。
彼女は夫と愛猫と一緒に柔らかくて温かな閉じた世界で幸せに浸っていましたが、今では1人きりとなってしまいました。
辛い。死にたい。
そんな明確な言葉を麻緒は口にはしませんが、言動のひとつひとつにその想いが滲み出ていて。
まさに夫と愛猫の後を追おうと準備している最中、麻緒はエンディングドレスを縫うという洋裁教室と出会います。
文字通り、自分の死に装束を縫うつもりで通い出した教室。
そこで出会ったミステリアスな先生や生徒のおばあさんたちと距離を置きながら、麻緒はエンディングドレスを縫うまでの洋裁の課題をこなしていきます。
課題をこなす中で、少しずつ思い出されていく亡き夫との思い出。
夫は自分の中に厄介な病魔が巣食っていると知って孤独に生きてきたにも関わらず、麻緒と出会ったときに結婚を直感し、麻緒を愛さずにはいられませんでした。
いつか来ると分かっていた別れ。
だからこそ未来を繋ごうと待ち望んでいた新しい命。
ひとつひとつを記憶を思い出していく麻緒は、時に幸せに浸りながら、時に絶望しながら。
自分の死後は麻緒にどう生きてほしいか願っていた夫の想いを知り、麻緒は少しずつ前を向き始めます。
誰にでも訪れる『死』とのひとつの向き合い方を、優しく教えてくれるような作品でした。
【読書レビュー】瑕疵借り(松岡 圭祐)
■あらすじ
訳あり物件に住み込む藤崎は不動産業者やオーナーたちの最後の頼みの綱。
原発関連死、賃借人失踪、謎の自殺、家族の不審死……どうすれば瑕疵を洗い流せるのか。
男は類い稀なる嗅覚で賃借人の人生をあぶり出し、瑕疵の原因を突き止める。
誰にでも明日起こりうるドラマに思わず涙する。
"賃貸ミステリ"短編集。
■感想
松岡 圭祐さんといえば、ドラマ化している作品なども書かれている方ですね。
松岡さんの作品を読んだことはあるような、ないような?
どちらにせよ、家の間取り図を見るのが好きなわたしにとって、『瑕疵物件』というキーワードは心惹かれるものがあります。
本作は短編集となっていますが、それぞれの短編の主人公たちは知人、家族、あるいは見知らぬ人の死や失踪を知り、彼らが住んでいた賃貸物件が『瑕疵物件』になったことを知ります。
瑕疵物件とは、ものすごく雑にいうと、次の人が気持ちよく住めなくなってしまった物件ということですね。
気持ちよく住めなくなるというのは、物理的なものであったり心理的なものであったりします。
瑕疵物件になってしまうと、不動産会社やオーナーには次の住人にそれを説明する義務が発生してしまいますし、次の住人が見つかりにくい傾向があります。
そこで、どうにか少しでも早く『瑕疵』をなかったことにしたい不動産会社やオーナーが頼るのが、藤崎という男。
やせ型で愛想のない藤崎は自ら瑕疵物件に転がり込み、謎の死や失踪をした前の住民たちの人生を炙り出していくのです。
この藤崎が、いわば安楽椅子探偵のような役割を果たすんですね。
藤崎の推理によって明らかになる、前の住民たちの人生。
そこには本人たちしか知り得ないドラマがあり、それが胸を熱くさせてきます。
やや現実離れしているような点も見え隠れしますが、わたしはさほど気になりませんでした。
それよりも藤崎が語る前の住民たちのドラマに心惹かれました。
すいすいと読み進められるので、すぐに読み終えてしまった本作。
続きがあるのなら読んでみたいと思いますし、ドラマ化するのにもちょうど良さそうな作品だなと思いました。
【読書レビュー】いなくなった私へ(辻堂 ゆめ)
■あらすじ
人気絶頂のシンガーソングライター・上条梨乃はある朝、渋谷のゴミ捨て場で目を覚ます。
昨夜からの記憶がなく、素顔をさらしているのに誰からも上条梨乃と認識されない状況に戸惑う。
さらに街頭ビジョンには、上条梨乃が自殺したというニュースが流れており……。
梨乃は自分を上条梨乃と認識できる青年・優斗らの力を借り、自らの死について調べだす。
『このミス』大賞優秀賞受賞作!
■感想
辻堂 ゆめさんの作品は初読みとなります。
タイトルとあらすじに惹かれて購入。
一見、記憶喪失もののミステリーかと思いきや、他人からも自分が『自分』だと認識されない不可解な状況に陥った冒頭。
しかもその『自分』は自殺したのだと世間では言われている。
「自分が『自分』だと思い込んでいる他人のパターンもあるか?」なんて想像しながら読み進んでいくと、どうやらそうではないらしい。
ファンタジーというべきか、オカルト要素というべきか。
第三者の視点で『輪廻転生』の話が出始め、それが長い時を経て、主人公・上条梨乃のこの不可解な出来事に繋がってくるらしいことが分かってきます。
なぜ、他人が自分を『自分』と認識できないのか。
なぜ、自分を『自分』だと認識できる他人が少数ではあるものの存在するのか。
なぜ、自分は死んでしまったのか。
物語の後半で、それぞれの点が繋がっていく様子が、読んでいて気持ちよかったです。
他人が自分を『自分』として認識できないという孤独な中でも、前を向くことを忘れない主人公・梨乃。
そんな梨乃の理解者となる青年との関係の築き方に青春さを感じ、ミステリーにしては明るく読み進められた一冊でした。
【ネタバレプレイ】FF16 #82 神と呼ぶべき存在
クライヴたちがタボールに着いたのと同じ頃。
自由都市カンベルの議事堂では、ダルメキアの評議員や豪商たちが話し合っていました。
ひとまず金の力で傭兵を雇い、議事堂の安全を確保した評議員たち。
しかし商材も船も全てアカシアに破壊された豪商たちは、カンベルの再建は不可能だと嘆きます。
そんな豪商たちを金の亡者と蔑む評議員たちに、そんな評議員たちを金の勘定ができない役立たずだと罵る豪商たち。
災禍を目前につまらないことでいがみ合う彼らの前に現れたのは、ウォールードのバルナバスとハールバルズでした。
強力な軍事力を持つといわれるウォールード国王を目の前に、助けを請う豪商たち。
しかし評議員の1人が、カンベルに溢れるアカシアのほとんどがウォールード兵だということを指摘し、それがウォールードの策略ではないかと声を上げます。
そうして雇った傭兵たちにバルナバスとハールバルズを捕らえるよう命令しましたが、バルナバスたちは圧倒的な戦力で傭兵はおろか、評議員や豪商たちまでも亡き者としました。
"シドルファスの遺志を受け継ぐ小娘…あれもまたミュトスとつながる思念の一端。
小娘の思念に惹かれて、じきにミュトスがこの地に現れよう。"
「丁重にもてなせ」。
バルナバスのこの言葉に、ハールバルズは動くのでした。
シーンはクライヴたちに戻り、ジョシュアからウォールードが既にアルテマの手中に落ちているという推測を聞かれました。
ここ数年のウォールードの動きは、国王バルナバスが進んで手を貸しているようにさえ見える。
ウォールードを動かして世界に混乱を呼んでまで、一体アルテマは何がしたいというのか。
そのときジョシュアが、クライヴたちに1枚の絵を見せました。
フェニックスゲートやマザークリスタルで同じ絵を見掛けていたクライヴとジル。
ジョシュアはこの絵を、古い時代の宗教画だと言いました。
しかしその宗教は今はもうすっかり廃れてしまい、当初の教えは残っておらず。
フェニックスゲートのものも形式的で特に意味はないものの、ジョシュアはこの絵こそがアルテマの目的を知る鍵だと考えていました。
全ての召喚獣を従える存在として描かれているのは、おそらくアルテマ。
アルテマは人智を超えた、まさに『神』と呼ぶべき存在でもあります。
召喚獣オーディンのドミナント・バルナバスは既にアルテマの配下に。
目的は未だ不明なものの、アルテマがクライヴを狙っていることは確かだと、ジョシュアは言うのでした。
それからジョシュアはヨーテに、自分たちはこのままカンベルに向かうことを告げます。
そして彼女への新しい任務として、隠れ家での警護を命じました。
ジョシュアの身を案じて、傍を離れることに躊躇いを見せるヨーテ。
「兄さんが僕を守ってくれる。大丈夫」というジョシュアの言葉に、彼女は泣く泣く引き下がったのでした。
ということで、次はタボールからカンベルを目指して出発します。
その前にまたクエストが発生したので、そちらから回収していこうと思います。
■タボールの石碑調査
タボールで、民俗学者のミロシュから声を掛けられたクライヴ。
彼はタボールの成り立ちを研究していましたが、調査のために歩き回っているうちに足腰を痛めてしまい、しばらく動けないのだそう。
そこで体力のありそうなクライヴに声を掛け、調査を手伝ってほしいと依頼をしてきたのでした。
調査の内容とは、タボールの村にあるいくつかの石碑に刻まれた碑文を確かめてくること。
村の中を歩き回って、さくっと碑文を確認してきました。
ミロシュのところに戻って報告すると、一問一答形式で碑文に書かれていた内容を答えるイベントが発生します。
うろ覚えながらも無事に回答できたところ、このタボールはいくつかの民族が集まってできた村で、その結果異なる文化が混ざり合いタボール独特の文化が築かれたということが分かりました。
無事にミロシュの手伝いを完遂し、クライヴは彼の研究に役立つことができたのでした。
次につづく!
【ネタバレプレイ】FF16 #81 不死鳥教団のヨーテ
メインストーリーに戻ります。
カンベルが大量のアカシアに襲われているとの報せを受けたクライヴは、ガブ、ミド、バイロン救出のためにカンベルに向かうことにします。
そしてその道中にある村・タボールで従者と落ち合う約束をしていたジョシュアも、クライヴと共に行くことに。
そこにジルも加わって、3人と1匹(トルガル)で隠れ家から出発しました。
まずはタボールを目指して、ダルメキア領にあるクロジット・エコーズと呼ばれる両岸を岩壁に囲まれた間道を通っていきます。
その途中で、瀕死のダルメキア兵を見つけました。
(メインストーリーに戻って早々にクエスト発生です。)
■遺恨
深い傷を負ったダルメキア兵。
彼らの野営地がエーテル溜まりに沈み、仲間がみんなアカシアになってしまったそうです。
このままでは、アカシアになった仲間が近くにあるタボールの村を襲ってしまうかもしれない。
そうなる前に仲間を始末してほしいと、そのダルメキア兵はクライヴに願いました。
クライヴが依頼を受諾すると、ひとまずの心の荷が下りたのか、そのまま息を引き取ったダルメキア兵。
クライヴが話に聞いた野営地でアカシアを一掃し、そこでなんとか一命を取り留めた別のダルメキア兵を発見します。
クライヴに依頼をした仲間のダルメキア兵の死を知ったそのダルメキア兵は、死んでしまった兵に代わってクライヴに礼を言います。
そのとき彼はクライヴの顔に見覚えがあると言い出し、ついにはクライヴが『シド』であることを突き止めました。
フーゴの私兵だったそのダルメキア兵は、フーゴの仇を討つのだとクライヴに勝負を挑もうとします。
しかしクライヴはそんな挑発を無視し、アカシアから受けた傷を癒すこと、ダルメキアに仕えていた者として少しでも人々のためになることをしろと返しました。
フーゴから極悪非道と聞いていた『シド』とは似ても似つかぬクライブの言動に、困惑を見せるダルメキア兵。
次は容赦しないと言いながらも、クライヴへの憎悪は和らいだ様子なのでした。
ちょっとしたクエストを終えてクロジット・エコーズを抜けると、すぐにタボールへと到着しました。
ジョシュアの案内で、1軒の民家の中へと入ります。
そこでクライヴはジョシュアの従者・ヨーテと顔を合わせました。
ヨーテが所属する『不死鳥教団』とは、ロズフィールド大公家を陰から支えてきた一族のこと。
彼らと接触が許されるのは大公位の継承者のみで、ロズフィールド大公家であるクライヴも多くは知りません。
フェニックスゲートで行われていた天啓の儀式を取りまとめていたのも不死鳥教団であり、18年前のあの日、教団は瀕死だったジョシュアを保護しました。
そうしてロザリアを出た幼いジョシュアは、今までずっとヨーテと一緒に旅を続け。
ヨーテがいなければ自分は今日まで生きていないと、ジョシュアは言います。
ヨーテの助けがあり、クライヴとジョシュアはこうして再び会うことができた。
そんな感謝の気持ちをクライヴはヨーテに伝えます。
そしてヨーテはジョシュアから受けていた任務の報告を始めました。
旧クリスタル自治領の災禍の晩に沖合にあった船影。
それはジョシュアの推察通り、ウォールード王国の旗艦・アインヘリアルでした。
ダルメキアのマザークリスタルの件にウォールードが介入していたことを知ったジョシュアは、その陰にアルテマの気配を感じて、不死鳥教団を使って少し調べていたそう。
ヨーテの報告によると、アインヘリアルは災禍の混乱に乗じて自治領を離れたあと、カンベルに向かったとのこと。
今カンベルを襲っているというアカシアの正体は、ウォールード軍の成れの果てだということが推察できます。
そしてアインヘリアルが出ている以上、バルナバスもカンベルの近くにいると、ジョシュアは考えるのでした。
次につづく!
【読書レビュー】万次郎茶屋(中島 たい子)
■あらすじ
動物園の片隅で、ひっそり地味に生きる老いたイノシシ・万次郎の密かな夢は、いつかカフェを開くことだった。
幼いころから万次郎の絵を描き続ける画家志望、しかし才能はないエリは、万次郎を主人公にした絵本を描くことを追い付くが……。
笑って泣けて、また笑える表題作「万次郎茶屋」を始め、ちょっと不思議で、じんわりしみる全6編を収めた珠玉の短編集。
■感想
中島 たい子さんの作品は初めて読みます。
表紙の万次郎(イノシシ)とあらすじの内容が好みだったので購入。
本作、あらすじの通り「笑って泣けて、また笑える、ちょっと不思議で、じんわりしみる」物語が好きな方にはぴったりな作品です。
おもしろく、テンポよく、すらすら読み終えてしまいました。
地球の破滅を防ぐために暗躍する地球外生命体に、幼心に夢を失くして『愛』を知らずに育った男。
ヒーローとして暗躍するもいつも今一歩足りない80%の成果しか出せない男に、地球外生命体との出会いが変化のきっかけとなった女。
一見するとそれぞれが独立した物語のようで、実は同じ世界で繋がっている。
わたしはこういう設定の短編集は好きなタイプなので、物語の世界に浸って読むことができました。
普段あまり本を読む機会が少ない方でも、読みやすい本だと思います。
反対に、現代ファンタジーのような話がお好きでない方には、あんまりかもしれません。