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【読書レビュー】瑕疵借り(松岡 圭祐)


■あらすじ

訳あり物件に住み込む藤崎は不動産業者やオーナーたちの最後の頼みの綱。
原発関連死、賃借人失踪、謎の自殺、家族の不審死……どうすれば瑕疵を洗い流せるのか。
男は類い稀なる嗅覚で賃借人の人生をあぶり出し、瑕疵の原因を突き止める。
誰にでも明日起こりうるドラマに思わず涙する。
"賃貸ミステリ"短編集。


■感想

松岡 圭祐さんといえば、ドラマ化している作品なども書かれている方ですね。
松岡さんの作品を読んだことはあるような、ないような?

どちらにせよ、家の間取り図を見るのが好きなわたしにとって、『瑕疵物件』というキーワードは心惹かれるものがあります。

本作は短編集となっていますが、それぞれの短編の主人公たちは知人、家族、あるいは見知らぬ人の死や失踪を知り、彼らが住んでいた賃貸物件が『瑕疵物件』になったことを知ります。

瑕疵物件とは、ものすごく雑にいうと、次の人が気持ちよく住めなくなってしまった物件ということですね。
気持ちよく住めなくなるというのは、物理的なものであったり心理的なものであったりします。

瑕疵物件になってしまうと、不動産会社やオーナーには次の住人にそれを説明する義務が発生してしまいますし、次の住人が見つかりにくい傾向があります。

そこで、どうにか少しでも早く『瑕疵』をなかったことにしたい不動産会社やオーナーが頼るのが、藤崎という男。
やせ型で愛想のない藤崎は自ら瑕疵物件に転がり込み、謎の死や失踪をした前の住民たちの人生を炙り出していくのです。

この藤崎が、いわば安楽椅子探偵のような役割を果たすんですね。

藤崎の推理によって明らかになる、前の住民たちの人生。
そこには本人たちしか知り得ないドラマがあり、それが胸を熱くさせてきます。

やや現実離れしているような点も見え隠れしますが、わたしはさほど気になりませんでした。
それよりも藤崎が語る前の住民たちのドラマに心惹かれました。

すいすいと読み進められるので、すぐに読み終えてしまった本作。
続きがあるのなら読んでみたいと思いますし、ドラマ化するのにもちょうど良さそうな作品だなと思いました。