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【読書レビュー】夏の王国で目覚めない(彩坂 美月)


■あらすじ

再婚の父に新しい母と弟。
私だけが家族になりきれてない……
高校生の美咲は寂しさを埋めるため正体不明の作家・三島加深の小説に熱中していた。
ある日、加深関連のサイトで『ジョーカー』という人物に「ミステリツアーに参加して謎を解けば加深の未発表作を贈る」と誘われる。
家を出て三日間のツアーに飛び込む美咲だが――参加者の消失、死体、さらに……
これは少女が体験した、二度と来ないひと夏のクローズドサークル


■感想

彩坂 美月さんの作品は初めて読みます。
タイトルが綺麗だったのと、物語にミステリー要素があるようでしたので、購入を決めました。

結論、読んでよかった1冊でした。

内容としてはやや本格さが足りないところもありますが、それでも問題なくミステリー小説だと呼べる作品です。
ミステリー小説をよく読む身として、クローズドサークルの状況を作る腕前は素直にすごいなと思いました。

あと、読後がすごく爽やかなのも良かったです。

これは主人公の美咲が高校生ということ、夏の三日間のできごとということ、結果的に血生臭い事件にならずに済んだこと、美咲の心の成長が描かれていることなどが要因だと思います。

同じミステリツアーに参加した人々は水知らずに人たちばかりですが、その中に美咲と年頃の近い、好青年も参加していました。

この緊張が続くツアーの中で、美咲とその好青年とが少しずつ距離を近づけていく。
犯人が参加者の中に紛れているかもしれないという状況で、少しずつ信頼関係を結んでいく。

そういった甘くて青い要素が、いい味を出していました。

作品としてはラノベのような良い意味での『軽さ』があるので、気持ちよくさっぱりする小説が読みたいという気分のときにはぴったりだと思います。
(とはいえミステリー小説なので、緊張感がある場面はもちろんありますけどね。)

少々ボリュームがある作品ではありますが、読みやすさもあるので、気軽にお勧めできる作品でした。