【読書レビュー】忘れ物が届きます(大崎 梢)
■あらすじ
不動産会社の営業で訪れた家の主人が、小学生の頃の自分を知っているという。
驚いた自分にその元教師が語ったのは、なぜか二十年前に起きた拉致事件の真相を巡る推理だった。
当時の記憶が鮮やかに蘇る……(「沙羅の実」)。
長い日々を経て分かる、あの出来事の意味。
記憶を遡れば、過去の罪と後悔と、感動が訪れる。
謎が仕組まれた、極上の「記憶」を五つ届けます。
■感想
こんなにも表紙と中身がそぐわない小説ってありますかね?笑
表紙だけ見ると、心温かになる誰かの思い出が詰まった『忘れ物』が届く感じがするのですが、中身はれっきとしたミステリー小説でした。
ちなみに大崎 梢さんの作品は初読になります。
本作は五つの短編からなっており、それぞれ過去の事件が明らかになっていく流れで書かれています。
一編目「沙羅の実」
一人の小学生が拉致されたという事件の裏側では、一人の男性の転落死が起きていた。
その男性の死は事件なのか、事故なのか。
弘司と広志を結ぶ、特別な実。
二編目「君の歌」
とある中学校で起きた女生徒が何者かに襲われた事件。
思春期特有の純粋な想いを抱えた彼女を、あの歌が励ます。
三編目「雪の糸」
安楽椅子探偵の推理。
あの雪の日に、彼は最後の最後で救済の糸を掴んだ。
四編目「おとなりの」
我が息子が容疑者となった強盗殺人事件。
何かを隠すように嘘を突き通す息子を助けたのは、おとなりの――。
五編目「野バラの庭へ」
夏の別荘でまるで神隠しに遭ったかのように忽然とその姿を消した美しい人。
焦がれた愛と突きつけられる現実と、ただ相手を想う愛を知った。
どの短編も読みごたえがあってよかったです。
個人的に一番おもしろかったのは、一編目の「沙羅の実」ですね。
ややご都合主義な面も見受けられますが、わたしは特に気にならず読み終えることができました。
特にフィクションだと割り切ってミステリーを読める方には、一度は読んでみてもらいたいと思う作品です。