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【読書レビュー】花は愛しき死者たちのために(柳井 はづき)


■あらすじ

硝子の棺に横たわる死せる美少女エリス。
彼女は決して腐敗せず、いつの頃から存在するのかもわからない。
棺は、黒装束の男に運ばれ、国も時代も超え、エリスはその姿を見せる。
ある時は親を知らない墓守の青年の前に。
またある時は友人の美貌に複雑な思いを抱く少女の前に……。
彼らはなぜ、エリスに惹かれてしまうのか。
その先に、破滅が待ち受けているとも知らずに。


■感想

腐敗しない死体なんてロマンがある…!
そして表紙の男性がイケメン…!

そんな思いで購入した本作。
柳井 はづきさんの作品は初読みとなります。

まず先にお話すると、4人の男女と死せる美少女エリスの物語が綴られていますが、そのどれもがバッドエンドです。
いえ、捉え方的にはメリバエンドともいえるかもしれませんが、何にせよ暗い結末が待っていることには間違いありません。
なのでそういった物語が苦手な方にはお勧めできない作品ではあります。

そして暗い結末ばかりになってしまうのは、死んでいるはずのエリスがあまりにも魅力的だからなんですね。
まさしく魔性の魅力を持つエリスの魔力とも呼べる力に、人々は抗えずに闇の中へと堕ちてしまうのです。

では、エリスとは一体何者なのか?
なぜ若くして死んでしまい、なぜ腐敗しないのか?

エリスに関する謎は深まるばかりですが、本作ではまったくもって解明されません。
これもまた、読み手の好みが別れそうな点ですかね。

そしてもう1人、エリスを次々と誰かのもとへと運ぶ存在・カロン
本作には『カロン』を継ぐシーンが描かれていますが、個人的にはそこが一番おもしろかったと思いました。

西洋的な文化を背景に、退廃的で妖しい、美しくもぞくっとするような暗い物語がお好きな方にお勧めできる作品です。