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【読書レビュー】冥の水底(朱川 湊人)


■あらすじ

【上巻】
市原玲人が友人のライター平松光恵に見せられた写真には首から上だけ狼の「狼男」の死体が写っていた。
その写真と取材手帳を託し、彼女は忽然と姿を消す。
取材手帳に記されていた"マガチ"とは何か?
殺人事件の容疑をかけられ、追われることになった玲人は息子をも巻き込んで逃避行を続けていくことになる。

【下巻】
息子一真と共に、失踪した光恵を探し出そうとする玲人。
時は30年近く遡り、山奥で暮らす、ある力を持った"マガチ"の青年シズクは、初恋の少女を追いかけて上京する。
彼女をそっと見守りながら、出すことのない手紙を書き続けていく。
ふたつの時が交錯し、物語はあまりにも切ないエンディングに向かって疾走する。


■感想

朱川 湊人さんの作品は(恐らく)初読みとなります。
タイトルとあらすじに惹かれたのはもちろん、帯の文言が気になって購入した作品です。

その帯の文言には、
・ミステリーのような謎解き!ファンタジーのような幻想感!ホラーのような緊迫感!
・他人とは違う異形のぼく。出せない手紙。ただ、君に会いたい!
などのうたい文句の他に、書店員や読者の方々の感想がありました。

そして実際に読んでみると…
上下巻の大作なのにするする読める!
ミステリーのような、ファンタジーのような、ホラーのような、でも純愛小説!
という、帯に書かれた内容と同じ感想を抱きました。

物語の結末的には、うん、純愛小説という言葉がしっくりくる気がします。
一途でひたむきで、美しくも儚い初恋の物語というところでしょうか。

不思議な力を持つ"マガチ"という存在が現代社会で生活をしている設定が物語を幻想的にしていて、物語の終盤はタイトルに相応しい描写で綺麗な作品だと思いました。

純粋なハッピーエンドではないけれど、その真っ直ぐさゆえに切ない純愛小説にご興味がある方に、ぜひお勧めしたい作品です。