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【読書レビュー】ひとごろしのうた(松浦 千恵美)


■あらすじ

大手レコード会社に勤める元ミリオンセラー・アーティストの大路樹は、「ひとごろしのうた」と題されたデモ音源の歌声と、69年型レスポール・カスタムのギター演奏に魅せられる。
「瑠々」というアーティス名以外、詳細が一切不明のままCDリリースに踏み切った大路だったが、ある日、同曲に影響されたという殺人事件の記事が週刊誌に掲載されて――アガサ・クリスティー賞受賞後第1作となる、出色の音楽業界ミステリ。


■感想

松浦 千恵美さんの作品は初読みとなります。

「ひとごろしのうた」という曲に影響されて起きたらしい殺人事件。
ミステリーといいつつホラー要素もあるのかなと、内容が気になって購入した作品です。

主人公の樹が「ひとごろしのうた」のデモ音源に出会ってから、その曲を歌っているアーティスト「瑠々」を探す。

音楽にちなんだ作品ということで音楽業界のことが詳細に描かれており、「へえ、そういうものなんだ」と勉強になる一方で、なかなか樹の前に姿を現わさない瑠々の存在が気になって仕方がありません。

こんなにも呼びかけているのに、なぜ瑠々は姿を現わさないのか?
姿を現わせない理由が何かあるのではないか?

主人公の樹がそう考え始めたころ、同曲に影響されたという殺人事件が起き、本人不在のまま華やかにデビューを飾ったはずの瑠々は世間からつま弾きにされてしまいます。

本当に瑠々の曲が、歌が、殺人事件に影響していたのか?

瑠々に並々ならぬ想いを抱えている樹が殺人事件の裏側を調査する中で、瑠々の真実に辿り着く。
本作はそんな物語でした。

とにかく続きが気になって、思わず読み進めてしまい。
瑠々の真実に辿り着いたときは、妙な達成感すら感じました。

ここまでは、おもしろく読めたんです。
そう、ここまでは。

作品の最後にエピローグという形で物語が完結したその後のことが少し描かれているのですが、これが全くいらない要素でした。

感想の冒頭でも書いた通り、当初はホラー要素もあるのではないかと思っていたのですが、そんな要素はなく純粋なミステリーでした。
なんならホラー要素なんでいらないと思えるくらい、しっかりとした物語でした。

なのに。

そのエピローグでなぜか急にホラー要素が描かれているんですよねー!
そしてこれが本当に全くいらない要素で、なんなら今までのおもしろさを損ねたとすら思ってしまいました。

エピローグ以外はおもしろいので、興味がある方にはぜひ読んでもらいたい。
でも読むなら、エピローグは読まなくていいよと、声を大にして言いたい作品でした。