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【読書レビュー】三つの名を持つ犬(近藤 史恵)


■あらすじ

犬を撫で、その温かさに触れることで、ようやく少し救われる。
売れないモデルの草間都は、愛犬エルとの暮らしをブログに綴ることで、心が充たされるだけでなく、生活の糧も得ていた。
だが、ある夜エルは死んでしまう。
追い込まれた都は、エルそっくりの飼い犬を、思わず家に連れ帰ってしまった。
ちいさな罪のはずが、それはやがて思いがけない事件に……切なく胸を打つ傑作ミステリー!


■感想

近藤 史恵さんの作品は初読みとなります。
犬好きのわたしとしては、犬が出てくるミステリーなんて見つけてしまったら読むしかないですよね。笑

本作、主人公は2人います。

あらすじでも書かれている、愛犬エルと暮らす売れないモデルの都。
そして、親が残した遺産をFX取引で使い切り、消費者金融に借金まで作ってしまった青年の江口。

何事もなければ接点などあるはずもなかった2人は、都が連れ帰ってしまった愛犬エルにそっくりな飼い犬を点にして繋がっていきます。

自身が犯した罪に怯えながらも、連れ去ってしまった飼い犬に心癒される都。
都にとって犬が弱点で、そこを突けば金銭がむしり取れるのではないかと考える江口。

2人の行きつく先はどこなのか、というような物語となっています。

そして近藤さんが描く犬が最高にかわいい。
描写されている仕草や表情がありありと頭に浮かんできて、本の中の存在のはずなのにまるで本当にわたしの顔見知りの犬のような気分になりました。

正直なところ、犬好きや犬を飼っている方にとってはなかなか過酷な描写があります。
けれどそれを差し引いても魅力的な小説でしたし、犬好きだからこそより本作の世界にのめり込めたようにも思えます。

ちなみに物語の締め括りは、「この終わり方が一番しっくりくる気がする」というような気持ちになりました。

ただのミステリーじゃない、ヒューマンドラマ的な要素もあわせ持ったおもしろい作品でした。