ゆるぽぽ帳

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【読書レビュー】箱庭図書館(乙一)


■あらすじ

僕が小説を書くようになったのには、心に秘めた理由があった(「小説家のつくり方」)。
ふたりぼっちの文芸部で、先輩と過ごしたイタい毎日(「青春絶縁体」)。
雪面の靴跡にみちびかれた、不思議なめぐり会い(「ホワイト・ステップ」)。
【物語を紡ぐ町】で、ときに切なく、ときに温かく、奇跡のように重なり合う6つのストーリー。
ミステリ、ホラー、恋愛、青春……乙一の魅力すべてが詰まった傑作短編集!


■感想

ZOOに引き続き、乙一さんの短編集。

『物語を紡ぐ町』というキャッチコピーの町・文善寺町。
この町の住人たちの出来事が、それぞれの視点で、背景で、短編ごとに違うテイストとジャンルで描かれています。

あまりにも短編ごとに文体であったり物語の雰囲気が違っていたので、「乙一さん、すごすぎる」と思っていたら、なんと。
こちらの短編集は、読者の方が書いたボツ原稿を乙一さんが自由にリメイクして書いたものなんだそう。
どこか乙一テイストを感じながらも全然違う作品のような感覚があったのは、どうやらこのためのようです。

日頃から乙一さんの作品に触れていないわたしでもそう感じたのだから、乙一ファンの方だったら良い意味でも悪い意味でも、もっと違和感を感じるのかもしれませんね。

それにしてもリメイクだと知ると、それはそれで改めて乙一さんの小説家としての実力を見せつけられた感じがします。
そもそも別々の世界の短編を集めたもののはずなのに、たった1人の全編共通の登場人物だけで、文善寺町という1つの町の物語としてまとめられていました。
これはすごい。

ジャンルも異なり、もとの原稿の書き手も異なる。
さらにいえばボツ原稿がもとになっているので、不完全なことも多かったでしょう。

なのにそれを乙一流に仕上げてしまえる手腕は、素直に尊敬に値します。
乙一さんって、とっても上手に短編を書かれる方なんだなあと認識しました。

ただ、初めて乙一さんを読む方にはおすすめしない本です。
なんかこう、乙一さんの良さが伝わらない気がしました。笑