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【読書レビュー】私たちが星座を盗んだ理由(北山 猛邦)


■あらすじ

難病の女の子を喜ばせるため、星座を一つ消して見せる男の子を描く表題作ほか、5つの物語のすべてに驚愕のどんでん返しが待つ、ファンタジックな短編集。
優しく、美しく、甘やかな世界が、ラストの数行で残酷に反転する衝撃は、快感ですらある。
まさに、ミステリの醍醐味!注目作家・北山猛邦の真骨頂!!


■感想

北山 猛邦さんの作品は初めてとなります。
例のごとく、あらすじと表紙買い。

あらすじでも書かれていますが、ジャンルとしてはファンタジックなミステリー。
どの短編もそのジャンルを名乗る相応しい、期待を裏切らない作品ばかりでした。

簡単に各短編に感想を書いてみるとこんな感じ。

第一編、恋煩い。
恋は人を狂わす。
勘違いやすれ違いで起きる、人間のぞっとする裏面を見せられる。

第二編、妖精の学校。
無垢な子どもを都合の良いように扱う世界や大人の狡猾さを見せられる。
読んだあとにネットにある第三者が書いた解説を読むと、理解が深まってよりぞっとする。

第三編、嘘つき紳士。
気づかなければ幸せなままでいられたのに。
第一編の恋煩いにも似た、人間の残酷な一面を見せられる。

第四円、終の童話。
怪物に石にされてしまった愛しい少女。
石のままで苦痛なき死を与えるか、生身に戻すことで再会は叶うが苦痛に塗れた死を与えるか、1人の青年に選択が委ねられる。
少女の目覚めを待ち侘びて待ち侘びて、焦がれ続けた青年が選んだ選択とは。

第五編、私たちが星座を盗んだ理由。
子どもの頃、その幼さゆえの感情の起伏や勘違いですれ違ってしまった幼馴染のお兄さんと再会した女性。
今も心に残る幼い頃の苦しい記憶から一歩踏み出そうとする女性に突きつけられた現実。

読みやすい文章で、ストーリーもじわじわと続きが気になる構成になっていたので、さくさく読んでしまいました。
読後は素直におもしろかったなと思ったので、「軽くミステリーが読みたいな」という気分のときにはお勧めな作品です。