【読書レビュー】彼女のこんだて帖(角田 光代)
■あらすじ
長く付き合った男と別れた。
だから私は作る。
私だけのために、肉汁たっぷりのラムステーキを!
仕事で多忙の母親特製かぼちゃの宝蒸し、特効薬になった驚きのピザ、離婚回避のミートボールシチュウ――舌にも胃袋にも美味しい料理は、幸せを生み、人をつなぐ。
■感想
定期的に読みたくなる食べもの小説。
本作はあらすじを読んだ瞬間から購入不可避でした。
ちなみに角田 光代さんの作品は初めてとなります。
小説としては十五編あるのですが、どの短編もイイ…!
ごはんの描写は然り、ごはんを食べることが主人公の誰もがどこかで馴染みがありそうな日常と密接に関連している内容なのがまたイイ!
ごはんを食べることは生きていくということ、その人を作り上げていく一部だということ。
そういった感情をゆっくりと、でも確実に思い出させてくれる作品でした。
短編集なのでひとつひとつの話は完結していますが、実は登場人物たちに繋がりがある書きっぷりとなっています。
一編目で脇役だった登場人物が、二編目では主役。
二編目で脇役だった登場人物が、三編目では主役、といった感じですね。
使い古された言葉かもしれませんが、人は誰しもが物語の主人公だというのを体現しているかのような作品です。
しかも本作、物語に出てきた全レシピがカラー写真で載っています。
こんだて帖として十二分に使えます。
角田さん本人が書いたあとがきも、井上 荒野さんが書いた解説も、共感できると言いますか、なんだか馴染むし納得できます。
手軽に作れるとか、洗い物が少ないとか、効率を優先したお料理ももちろんおいしいですが、本作を読んだあとは丁寧に作ったお料理を――とりわけ誰かが自分のために作ってくれたお料理を食べたくなりました。