ゆるぽぽ帳

趣味の本やらゲームやら

【読書レビュー】海の底(有川 浩)


■あらすじ

4月。桜祭りで解放された米軍横須賀基地
停泊中の海上自衛隊潜水艦『きりしお』の隊員が見た時、喧噪は悲鳴に変わっていた。

巨大な赤い甲殻類の大群が基地を闊歩し、次々に人を「食べている」!

自衛官は救出した子供たちと潜水艦へ立てこもるが、彼らはなぜか「歪んでいた」。

一方、警察と自衛隊、米軍の駆け引きの中、機動隊は凄絶な戦いを強いられていく――ジャンルの垣根を飛び越えたスーパーエンタテインメント!!


■感想

以前に読んだ『塩の街』とシリーズ作の本作。
塩の街よりは薄めではあるものの、こちらも立派な恋愛小説です。笑

今回は現代の日本を舞台に巨大なザリガニの大群が突如として襲い掛かってくるというもので、パニック映画や怪獣映画を観ているような気持ちで楽しめる作品でした。

そのようなSF面が楽しめる一方で、もう一方の楽しみとなった面があります。
それは、警察と自衛隊が出動や活動するまでの組織のいざこざを描いているところです。

如何にも縦割り社会で、現場の人間にはもどかしさにしかならない上層部の面子の守り合い。
現場では死傷者が出ているのに、法的な障害で思うように身動きが取れない。

なんというか社会問題を突いている(決して善悪を語っているわけではない)視点がおもしろいんですよね。
なんなら塩の街より面白く読めた気がします。

それから潜水艦の中という閉鎖された空間で、より浮彫りとなった子どもたちの奇妙な関係性も社会の縮図を見ているようでした。
子どもを取り巻く環境が、どのように子どもに影響するのかも少し考えさせられました。

ちなみに本作には事件が起きる前日譚の短編が収録されており、本編を読んだあとだからこそ登場人物たちへの思い入れをもって読めました。

塩の街が2人の男女の関係を中心に描かれた作品なら、本作・海の底は2人の男を中心に、自分の『使命』を果たそうと戦うかっこいい男たちの姿が描かれた作品です。

あ。もちろん恋愛要素もありますからね?(大事なことなので2回目。笑)

ここまで来たなら、残りのシリーズ作品・空の中も読まなければと思いました。