
■あらすじ
タワーマンションの最上階に暮らす売れっ子作家・珠美は人生の絶頂。
一方、売れない作家・桜子は安マンションで珠美を妬む日々。
あの女さえいなければ――。
ところが、珠美がマンションから転落。
女たちの運命が逆転した……が、それは悲劇の始まりに過ぎなかった。
次々現れる怪しい女、女、また女。
女がいるところに平和なし。
■感想
真梨 幸子さんの作品は、『ふたり狂い』以来の二作目の読書となります。
前回読んだ『スパイラル・エイジ』に続き、意図せず女性のドロドロ話を読むこととなりました。笑
本作、読み進めるためにエネルギーが必要な作品となっています。
400ページを超えるボリュームも関係あるのですが、それ以上に叙述トリックで描かれているから想像と推理に頭を使うし、何より登場人物たちの熱量がすごい。
人が感情を発するにはエネルギーが必要かと思いますが、それを受け取る側もまた発する側と同等かそれ以上のエネルギーが必要になるとわたしは思っています。
本作はその『発する側』のエネルギーがすごかった。。。
解説を担当された長江 俊和さんも書かれているのですが、本作は『作家』のリアルな感情が描かれています。
恐らく、本作を書いたご本人・真梨さんの実体験も描かれているのだろうと思います。
だからこそ、こんなにエネルギー溢れる作品になったんだろうなあ。
さて、肝心なストーリーについてですが、最後の展開は素晴らしかったです。
思わず「そっちだったか!」と唸ってしまうくらい、ミステリーとしては上質な結末だったと思いました。
しかしながら、先述した通り叙述トリックが使われていることと、そのトリックの都合上、語り手がはっきりしない状態も含めて語り手がころころと変わるので、読みにくさを感じる人もいるように感じました。
実際にわたしも中盤あたりで一度、語り手の想像疲れを起こしました。
そして最後の展開は素晴らしかったけれど、それはミステリーとして素晴らしかったという意味であり、読み終わったあとに本作を素晴らしいと思ったという意味ではないことにご留意いただきたい。
余程文字慣れしている方か、語り手が曖昧なまま場面が何度も変わることに耐えられる方であれば、ぜひ一度は読んでみてほしいと思う作品でした。