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【読書レビュー】スパイラル・エイジ(新津 きよみ)


■目次


1. あらすじ

「人を殺して来たの」と、美樹の部屋に訪ねてきた同級生雪乃は妊娠していることを理由に、ずるずる居続ける。
殺人者を匿っている秘密を、美樹は別れたばかりの不倫相手の妻曉子に知られてしまう。
身体も環境も大きく変わるアラウンド・フォーティーの女性たち。
その心理が思わぬ事態を引き起こす。


2. 感想

新津 きよみさんの作品は初めて読みます。

本作はサスペンス小説と謳っているにも関わらず、加害者(雪乃)や被害者(雪乃と付き合っていた男)の事件に関する描写はほとんどありません。

では何が描かれているか?

殺人を犯してしまった加害者の雪乃、雪乃を匿ってしまった美樹、自ら匿いにいってしまった曉子、特にこの三人の心理描写がメインで描かれているのです。

しかもこの心理描写が秀逸で、身体の変化への戸惑い、自分にはない魅力を持つ同性への嫉妬心、それを認めつつも決して表には出さない虚栄心、大切なものを守ろうとする母性、今の生き方は間違っていないのだと思い込む自尊心・・・

メインの三人の他にも女性の登場人物が出てくるのですが、彼女たち全員が上述のような心の機微を見せてくれます。

正直なところ「そんな考えに至るか?」と思うようなシーンもありました。
しかし読後には、自分もさらに歳を重ねて自分や周りの環境が作中のように変わっていたなら…もしかしたらそんな考えに至るかもしれないと思い直しました。

そしてストーリーの最後には、「そんなことまでする!?」と驚きの展開が待ち受けていました。
遺伝子学(?)的にいろんな意味で女性は『守り』に特化していると聞きますが、これには女の強さ、したたかさ、狂気、奇妙な団結力を感じずにはいられませんでした。

ちなみに本作に出てくる男性たちは、総じて印象が薄いです。笑
女性たちを際立たせるためにあえて薄く書かれているのかもしれません。

読後に調べてみると、新津 きよみさんの他の作品でも女性の心理が詳細に描かれているようですね。
本作を読んでみて面白かったですが、わたしの好みとは違っていたので、自ら他の作品を手に取って読んでみようという気持ちまでには至りませんでした。

でも機会があれば読んでみたいと思いますし、もう少し自分が歳を重ねた頃に、改めて読んでみてもいいなと思えました。