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【読書レビュー】食堂かたつむり(小川 糸)


■目次


1. あらすじ

同棲していた恋人にすべてを持ち去られ、恋と同時にあまりに多くのものを失った衝撃から、倫子はさらに声をも失う。
山あいのふるさとに戻った倫子は、小さな食堂を始める。
それは、一日一組のお客様だけをもてなす、決まったメニューのない食堂だった。


2. 感想

食堂、パン屋、カフェ、レストラン…
食べものの描写が丁寧で、食べものや場所を通じて繋がり合う登場人物たちの物語って、ときどき読みたくなっちゃうんですよね。

ほっこりすることもあれば、ぎゅっと胸を締め付けられることもあるし、感動や哀しみで鼻の奥がツンとしてくる。
なんだろう。自分の中の様々な感情を取り戻したくなってるんですかね?笑

それはさておき、小川 糸さんの『食堂かたつむり』。
わたしの期待通りの素敵なお話でした。

食べものの描写がとてもおいしそうなのはもちろん、主人公の倫子が声を失う設定も相まってか、心の声や想いが言葉にする以上により訴えかけるように描かれていた気がします。

恋人との突然すぎる一方的な別れ。
生まれ育った故郷への哀愁と愛着。
唯一の家族である母親とのぎこちない関係。
その母親との唯一の繋がりともいえる家族のような豚。
倫子を温かく迎えてくれる周囲の人たち。
そして倫子の料理をおいしいと言ってくれるお客さんたち。

決して派手なストーリー構成ではないけれど、じわじわと読者の胸に染みわたるように、倫子の感情の揺らめきを共感することができました。

読み終わってから知ったのですが、本作は柴咲コウさんで映画化もしていたんですね。
ぜひ映画も観てみたいと思いました。

あと、自分のことを想って作ってくれたごはんが食べたくなりました!笑