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【読書レビュー】T島事件 絶海の孤島でなぜ六人は死亡したのか?(詠坂 雄二)


■あらすじ

映像企画制作会社のプロデューサーから月島前線企画に調査依頼があった。
ロケハンのため孤島に渡った六人が全員死亡したという解決済みの事件。
膨大な記録映像が残っており、警察も捜査を終えている。
依頼人は、残された映像を彼らの遺作として公開するため、真偽を調べて欲しいというのだが……。
名探偵・月島凪は誰にも見えなかった真相にたどり着けるのか?


■感想

詠坂 雄二さんの作品は初めて読みます。
事件現場にいた全員が死亡するというミステリー小説らしい展開のあらすじに惹かれて購入をしたわけですが…

これは声を大にして言いたい。
本作は、詠坂 雄二さんの作品の一冊目として読むには全くもって相応しくないです。

つまり、わたしは詠坂さんの作品を初めて読むにあたり失敗しました。笑

なぜ一冊目として相応しくないかというと、主に2点あります。

1点目「つまらないように書かれた小説であること」。

あらすじにも記載がある通り、ロケハン時の記録映像が文章化されています。
大まかに分けると、物語の前半が記録映像の再現、後半が推理という感じでストーリーが進むのですが。。。

この記録映像の再現というシーンがなかなかに『つまらない』。
ロケハンの記録なので視聴者に見られることを意識していない映像ということもあり、その『つまらない映像感』がそのまま文章になっています。
ロケハンの最中にスタッフ6人が死亡していくのですが、これもまた記録映像の通りに淡々と書かれていて『つまらない』。

そう、圧倒的に『つまらない』演出が多いので、読むのも『つまらない』のです。
中には読み進められない人もいるんじゃないかな?と思うくらいです。

意図してつまらなく書かれている本作(少なくともわたしはそう思った)なのですが、もしかすると詠坂さんの作品そのものをつまらないと思ってしまう方もいるのではないかとも思いました。

2点目「名探偵・月島凪への思い入れがない」。

作品自体に直接的な繋がりはないので、月島凪が登場する他の作品を読んでいなくても問題はありません。

ただ、本作の終盤の謎解きシーンでは、正直にいうと肩透かしを食らいました。
全然この事件が起こるに至った動機に少しも共感できないし、理解できない。
残念ながら「そういうものなんだ」と、そのままを受け止める形で読了となってしまいました。

で、なぜ少しも共感できないのか、理解できないのかを考えてみたところ、「名探偵・月島凪に思い入れがないからだ」という答えに至ったわけです。

上記2点の理由から、「詠坂 雄二さんの作品一冊目には相応しくない」とお伝えしたというわけです。

みなさまのお察しの通り、決して気軽にお勧めできる作品ではありません。
とはいえ、読書をする者として、詠坂さんの書き手としての実力は十分に感じられる一冊ではありました。