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【読書レビュー】水に眠る(北村 薫)


■目次


1. あらすじ

TVディレクターである耕三の家に大学受験を控えた義妹がやってきた。
妻が不在のある朝、妹は自分の考えた脚本の内容を語り始める。
それは、激しい思慕を抱いて義理の兄の元へ駆ける女の話だった――(「ものがたり」)。
著者ならではの美しく繊細な文章で様々な愛の形を描く10の物語。


2. 感想

北村 薫さんの作品は初めてとなります。
10編からなる短編集なので、読みやすいかなと思って手に取ってみました。
あと、なんとなく「水」系とか水を連想させるタイトルは気になります。

感想をまとめると、どれも不思議な話で、完全には分からないけれどどこか分かるような共感を得られる作品でした。
それから正直に言うと、最後までよく分からなかった(自分の中に落とし込めなかった)話もありました。

1編目「恋愛小説」
独身女性を取り巻く環境と不思議な直感で繋がった愛のカタチ。
前世からの繋がりというわけではないけど、それに似た『何かの繋がり』を感じるお話。

2編目「水に眠る」
『不思議な水』を感じられる人々の同類愛。
またはその『不思議な水』への敬愛ともいえる何かのお話。

3編目「植物採集」
黄水仙色、竜胆色、忘れな草色、白百合色、若苗色、シトロンイエロー。
色鮮やかな世界で一人の美しい女が、とある男に手を伸ばせず、気づかれず、ゆえに女は色づかないお話。

4編目「くらげ」
コミュニケーションがなければ愛も生まれない。
近未来的で印象的なお話。

5編目「かとりせんこうはなび」
これは、文字通り『読んだ』だけ。
どういうお話だったのか感じるに至らず。

6編目「矢が三つ」
二夫一妻制の世界のお話。
平等に愛するって難しい。
同じ立場で同じ一人からの愛を得る状況で、同じ立場の相手を思いやるって難しい。
打算的なところも生じるよね。

7編目「はるか」
どういうお話だったのか感じるには至らなかったけど、読んでで楽しくはなる。
何事にも全力で当たっているような女の子を見ているおじさんのお話。

8編目「弟」
これがまた話を感じるのが難しい。
他の作品と違って、一人称で物語は進む。
師匠愛と弟愛を語る、狂った(呆けた?)男のお話。

9編目「ものがたり」
遠回しに愛を告げる少女と、それに気づかないふりをする男。
あらすじにもなるくらい、この短編集の中では一番万人受け(読むという意味で)しそうなお話。

10編目「かすかに痛い」
繋がっているのに向かい合わない愛のお話。
女が眼鏡をかけているのは、現実を裸の目で直視したくないからなのかな?

10編の感想を端的に書いてみましたが、3編は「よく分からなかった」という感想になってしまってますね。
読んだことのある方がいらっしゃいましたら、ぜひご意見を聞かせていただきたいと思います。

また本作には『贅沢な解説』と称して、有栖川 有栖さんなど11名による解説が収録されています。
この解説は一見の価値があり、たしかに『贅沢』ではありますが、『解説』かと言われると何か惜しい気がします。

うーん。自分が分かっていないからか、本作を他の方にお勧めする感じではないですね。
短編集じゃない北村 薫さんの作品を読んでみるべきなのかも?