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【読書レビュー】十一月に死んだ悪魔(愛川 晶)


■目次


1. あらすじ

売れない作家・柏原は交通事故で一週間分の記憶を失う。
その日を境に、突然意識が遠のき恐ろしい「穴」を見る発作を起こしてしまう。
十一年後、謎の美女・舞華と偶然出会った事をきっかけに、封印されていた記憶が戻り始め……。


2. 感想

愛川 晶さんの作品は初めて読むのですが、なるほど、これは悪くはない(けど良くもない)。
ミステリーとしてあっと驚くようなトリックや展開があるわけではないのですが、「これがどう繋がるんだろう?」というような伏線が至るところに散りばめられていて、続きが気になる書きっぷりとなっています。

まずストーリーを構成している要素がおもしろいですね。
記憶を失った期間の自分、現在の自分、作家としてデビューした作品の意味深な内容、記憶を失った期間の自分が書いたと思われる小説の内容、主人公ではない誰か男二人の長文メール…
ストーリーが進むにつれて、小説の世界(妄想)と現実の境が曖昧になり、読者を惑わそうという愛川 晶さんの意思を感じます。
わたしはこの惑わしに抵抗なくミステリー部分を楽しむことができましたが、人によってはあっちこっちに場面が飛ぶので読みにくさを感じることもあるかもしれません。

最終的に伏線は回収されてミステリーの全貌は明らかになるのですが、読み終えたあとは「すっきりした」というよりは「ふーん。そういうことだったんだ」というフラットな感情になりました。
なので冒頭の『悪くはない(けど良くもない)』という感想になったんですね。

あとは何かの伏線というわけではなく、ラブドールと悪魔関連の話が出てくるのですが、これがストーリーにどう関係があったのかが読み取ることができませんでした。
なので、ここはちょっぴり不完全燃焼かな?

また、妄想と現実を曖昧にするため、また狂気を演出するためにエロスが散りばめられたストーリーになっているのかと解釈しましたが、それも書く必要があったのかしっくりきませんでした。

ジャンルとしては、本の裏表紙に『恋愛ミステリー』と書いてあったのですが、恋愛要素はほぼなく(性愛要素はある)、どちらかというとホラー小説っぽい印象がありました。
「恋愛ミステリーが読みたい!」と思って手に取ると失敗する確率が高いかと思うので、これから読む方はお気をつけください。

人によっては読みにくさはあるかと思いますが、ホラー小説、ミステリー小説がお好きな方は一応読んでみても損はない作品だと思います。