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【読書レビュー】PK(伊坂 幸太郎)

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■目次


1. あらすじ

人は時折、勇気を試される。
落下する子供を、間一髪で抱きとめた男。
その姿に鼓舞された少年は、年月を経て、今度は自分が試される場面に立つ。
勇気と臆病が連鎖し、絡み合って歴史は作られ、小さな決断がドミノを倒すきっかけをつくる。
三つの物語を繋ぐものは何か。
読み解いた先に、ある世界が浮かび上がる。


2. 感想

伊坂 幸太郎さんの作品は今までも何冊か読ませていただいているのですが、全体的な作品の印象としては『現実的+ちょっとファンタジー or SF』な作風のイメージがあり、「もしかしたらこういうこともあり得るかもしれない」と心をくすぐられる感じがあります。

本作は、一見『PK』『超人』『密使』の中編3部作からなるのかと思いきや、最後まで読むと「長編だったー!」と良い裏切りがあって楽しい作品になります。

まず『PK』は、4つの視点から物語が語られるため、最初のうちは少々混乱するかもしれません。
ですが、それぞれの視点に別の視点の人物が登場しており、徐々に4つの視点がどの時代の誰の視点の話かが見えてきます。

でも実は1つだけ見極めきれない視点があって、これがまた想像力を掻き立ててくるのです。



続いて『超人』は、一見『PK』と関係ない話のように始まるのですが、読み進めると『PK』の登場人物が出てきて関連性が見えてきます。
ここでさらに面白いのが、『PK』と『超人』の登場人物に関係性はあるものの微妙に時代(時勢)が変わっている、という点です。

ほんの少しだけ読者に違和感(疑問)を抱かせたまま最後の話となる『密使』。
2つの視点から物語が語られるのですが、『PK』と『超人』の伏線やら違和感(疑問)を見事に回収していってくれる。

ただ、国民的に嫌われていると言っても過言ではない虫『G』の話が出てくるので、苦手な人は要注意。



そうして読み終わったあとに残るのは、良い意味での「語られていない部分は読者の想像にお任せします」と「ちょっともう1周読んでみようかな」という気持ちでした。

解説も含め259ページという読みやすい量なので、さくっとちょっと不思議な話を呼んでみたい方にはお勧めの作品だと思います。

SFが好きな方には、特に『密使』が興味をそそられる作品になっていると思います!