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【読書レビュー】ソロモンの犬(道尾 秀介)

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■目次


1. あらすじ

秋内、京也、ひろ子、智佳たち大学生4人の平凡な夏は、幼い友・陽介の死で破られた。
飼い犬に引きずられての事故。
だが、現場での友人の言動に疑問を感じた秋内は動物生態学に詳しい間宮助教授に相談に行く。
そして予想不可能の結末が……。

2. 感想

道尾 秀介さんの本は、今まで『水の柩』『背の眼』『球体の蛇』の3冊を読んでおり、『ソロモンの犬』は4冊目の本となります。
この本を読んだ直後の感想は「プロットが練られていて、丁寧に起承転結が書かれたお手本のような本だな」でした。


小説の1ページ目早々からすでに暗雲が立ち込めており、これから何かが起きる予感をひしひしと感じました。
そして奇妙な雰囲気の喫茶店に集まった大学生4人は、幼い友人を死に至らしめた『事故』の話を始めます。


『事故』が起きる前の、なんてことない平凡な夏の日々。
それが突然幼い友人の死で崩れ去り、仲が良いはずの4人の間で複雑な感情がせめぎ合います。


このせめぎ合いは学生特有の青いものもあれば、大人になっても心のどこかにある幼さを、上手に描写されているように思います。


途中で絶対に外せない存在の間宮助教授が加わり、『事故』の真相に近づくかと思いきや、謎はさらに深まるばかり。
ヒントをチラ見せするような描写の連続に、思わずあれやこれやと結末を想像せずにはいられません。


そうしてヒントがある程度出揃い、あとはそれを組み立てて推理していくだけというような状況の中、物語は思いもよらない展開を見せます。


――― Welcome to riverside cafe SUN's


冒頭の奇妙な喫茶店の看板が意味を持ち、『事故』とは別のベクトルで、これまたとある登場人物のこれからを想像せずにはいられなくなり。
その次のシーンでは、先ほどのとある登場人物への想像が「やっぱりか」となりつつも、すぐに『事故』の真相に関する描写が入り、今度はそちらに思考が持って行かれます。
と思いきや、これまた先ほどの「やっぱりか」がやっぱりではなくなるという怒涛の真相ラッシュが続いて、これが読んでいてなかなか気持ちよいものでした。


じわじわと読者の想像を掻き立てるヒントを至るところに散らばせながら、最後にどん!どん!どん!と真相を持ってくる。
『ソロモンの犬』がどんな本かと聞かれれば、私はそう答えます。(内容には一切触れていない雑な回答ですね。)


最後のエピローグはどこか平凡な日常に戻りつつある雰囲気を醸し出しつつ、小さな伏線を回収するまとめのような形となっています。
そこでは、大学生4人の成長(特に京也)が感じられて、ミステリー小説でありながらも、どこか青春ストーリーを読んでいるような気持ちになりました。


ちなみに。
私の感想で『事故』という言葉に『』をつけているのですが、これには意味があります。
『事故』の話なのに『ミステリー小説』って、何か意味深だと思いませんか?


気になった方は、ぜひお手に取って読んでみていただければと思います。