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【読書レビュー】痣(井岡 瞬)


■あらすじ

平和な奥多摩分署管内で全裸美女冷凍殺人事件が発生した。
被害者の左胸には柳の葉のような印。
二週間後に刑事を辞職する真壁修は激しく動揺する。
その印は亡き妻にあった痣と酷似していたのだ!
何かの予兆?真壁を引き止めるかのように、次々と起きる残虐な事件。
妻を殺した犯人は死んだはずなのに、なぜ?俺を挑発するのか――。
過去と現在が交差し、戦慄の真相が明らかになる!


■感想

井岡 瞬さんの作品は初めて読むと思います(たぶん)。
タイトルとあらすじを見て、おもしろそうな気がしたので購入。

主人公の真壁刑事ですが、かつて自分の妻が被害者となった殺人事件の犯人の死から、まるで生きる意味を失くしたかのようにただ時間が過ぎるだけの日々を過ごしていました。

そんな刑事の仕事もあと二週間後には辞める。
そんな折、真壁は平和な日々をぶち壊すセンセーショナルな殺人事件に遭遇します。

なぜかその事件から連想される妻のこと。
事件は連続殺人事件となり、遺体が発生されるたびに妻との思い出が真壁の中で蘇ります。

妻とこの殺人事件には繋がりがある。その繋がりは一体何なのか。

覇気のない人生を送っていた真壁は、刑事としての本来の自分を取り戻しながら連続殺人事件の真実を追う、という話でした。

本作、読者を惹きつける魅力がすごいです。

事件が起きるたびにとにかく続きが気になる。
さらに文章の読みやすさも相まって、すらすらと読んでしまう。

犯人の意図や動機が判然としないまま物語は終盤を迎えて……うーん!真相はそういうことだったのか!となる。

ちなみに真相が分かったあとは、犯人への不気味な印象が強烈に残ったまま、すっきりしない読後感が残りました。

このすっきりしない読後感は作品への批判というわけではなく、最後まで1ミリも共感できなかった犯人への気持ち悪さからくるものなんですよね。
だからこの気持ち悪さも含めておもしろい作品だったと、改めてお伝えします。

こうなってくると、井岡さんの他の作品も気になるなー。