ゆるぽぽ帳

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【読書レビュー】きのうの世界(恩田 陸)


■目次


1. あらすじ

■上巻
上司の送別会から忽然と姿を消した一人の男。
一年後の寒い朝、彼は遠く離れた町で死体となって発見された。
そこは塔と水路のある、小さな町。
失踪後にここへやってきた彼は、町の外れの『水無月橋』で死んでいた。
この町の人間に犯人はいるのか。
不安が町に広がっていく。

■下巻
塔のある町が抱える秘密を住人たちは何も知らない。
夜に塔を見てはいけないという町に伝わる不思議な教え。
亀とハサミと天の川のステンドグラスが表す意味とは。
殺された男は駅の掲示板に奇妙な張り紙を持ち込み、誰かと連絡を取っていた。
彼は町の秘密に触れてしまったのか。
雨が降る。
町の本当の姿が明らかになる。


2. 感想

恩田 陸さんの作品って、タイトル、表紙、あらすじがよくできていますよねー。
ジャケットとあらすじ買いをするわたしとしては、ついつい手に取ってしまう魅力があります。

さて、恩田 陸さんの『きのうの世界』。
他の読者のみなさんが度々口にされる『恩田ワールド』全開の作品でした。

凶器が見つからない他殺と思わしき死体で見つかった失踪者。
何のために建てられたか誰も知らない三本の塔。
歴史ある町を巡る水路。

他にも気になるキーワードはたくさんありますが、この三つだけでももう面白そうだと思いませんか?
町には誰も触れてはいけない壮大な秘密がありそうだと、ドキドキわくわくしませんか?

恩田さんって読者を惹き付けるのがすごく上手だなあと、ほぼ毎回思うんです。
とはいえ、本作はミステリーというにはフィクション要素が強い気がするので、現代ファンタジーと呼ぶ方がまだしっくりきますかね?
とにかく不思議さが詰まった作品ですね。
感じとしては前にレビューした『月の裏側』の同じジャンルかな。

相変わらず風景の描写はとても素敵ですし、前半・中盤の続きが気になる書きっぷりも良いです。
ただ終盤は完全に全ての謎が明かされるわけではなく、「読者の想像に任せるよ」「いろんな解釈をして楽しんでね」というようなふんわりとした終わり方をするので、そういうのが苦手な方にはあまりお勧めできない作品ではありますかね。

ちなみに『恩田陸がすべてを詰め込んだ集大成』というコピーで出版された作品のようですが、たしかに恩田ワールド全開の作品だと思うけど、集大成と呼べる作品は他にあるような気がしました。
『きのうの世界』が出版されたときには、本作が本当に『集大成』だったのかもしれませんが。。。

「曖昧な結末でも問題ない」「恩田ワールドどんどこい!」「ミステリーじゃなくても大丈夫」「『月の裏側』がけっこう好きだった」というような方には、ぜひお勧めしたい作品ですね。