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【読書レビュー】七回死んだ男(西澤 保彦)


■あらすじ

高校生の久太郎は、同じ1日が繰り返し訪れる「反復落とし穴」に嵌まる特異体質を持つ。
資産家の祖父は新年会で後継者を決めると言い出し、親族が揉めに揉める中、何者かに殺害されてしまう。
祖父を救うため久太郎はあらゆる手を尽くすが――
鮮やかな結末で読書界を驚愕させたSF本格ミステリの金字塔!


■感想

西澤 保彦さんの作品を読んだのは初めてなのですが、本作『七回死んだ男』は読んで当たりの作品でした。

資産家の祖父が殺害されるという明らかな現代ミステリーの大筋なのに、主人公の久太郎が『反復落とし穴』なるタイムリープを繰り返す体質を持つというSF設定。
これはミステリ好き、そしてSF好きのわたしとしては無視できない!

ということで読んでみると、ストーリーのテンポがいいので、すいすい読んでしまう。
久太郎はもちろんのこと、他の登場人物たちも癖があって、彼らの会話はコメディにも見えてしまう。
なのに読み進めていくと、気づかない内に西澤さんの巧妙な罠に引っかかっていて、結末では「あっ!」と驚かされてしまう。

始まりから終わりまで気持ちよく読めた作品だったので、西澤さんの他の作品にも大いに興味が湧きました。

あとがきによると、西澤さんはこういうSF混じりのおもしろミステリを書かずにはいられないタイプの方のようで。
西澤さんは実力もあってファンもいる(同録の蔓葉 信博さんの解説でそう書かれている)にも関わらずその自己評価はとても低く、いっそ自虐ネタかと笑えてくるくらいです。

昔ながらの本格ミステリーが大好きだ!という方には少々物足りない感じもするかもしれませんが、軽く楽しく読めるミステリーとして、ミステリー好きの方から初心者の方までお勧めしたい作品です。