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【読書レビュー】満月ケチャップライス(朱川 湊人)


■あらすじ

兄妹と母さんが暮らす家に料理上手のモヒカン男がやってきた。
繰り出すメニューは、男同士のムニエルにブロッコリーのウソピザ、満月ケチャップライス。
家族の仲間入りのお礼にスプーン曲げの超能力まで授けてくれた。
その超能力を狙う怪しい宗教団体が周囲をうろつき出し……。
忘れられない「家族」の物語。


■感想

朱川 湊人さんの作品は2冊目です!
派手さはないけどしっとりと、風景や人の感情の描写が上手な作家さんだなという印象です。

仕事柄、いろんな男性との出会いが多いお母さん。
ときには男性を家に連れて来ることもあり、知らない人が家にいることに驚かなくなった兄妹。
とある朝、目が覚めたら知らないモヒカン男が家にいて、初めは無関心や警戒心を抱いていた兄妹が、料理を介してモヒカン男に馴染んでいきます。

そうして仲良くなった頃、モヒカン男に超能力を授けられた兄妹。
そこから兄妹たちの生活は明るくなり、モヒカン男への好意も増し、『家族』としてこのまま兄妹、お母さん、モヒカン男の4人でいつまでも楽しく過ごすことを夢見ます。

そんなとき、ずーっとモヒカン男を付け狙っていた宗教団体の手が、無垢な妹へと伸びていきます。

そこで兄が知ったモヒカン男の過去や、妹を巻き込んでいる宗教団体の正体が徐々に明らかになり……
宗教団体から妹を救うため、兄が取った行動とは?
モヒカン男が取った行動とは?

というような感じで、兄の成長を軸に『家族』というものの考え方をやんわりと投げかけられたような作品でした。

本作に出てくる宗教団体は実在した団体がモチーフになっていて妙に現実味がある一方で、超能力という非現実的な要素もあり。
以前に読んだ『冥の水底』と同様に、現代とファンタジー(SF)が絶妙な具合でまろやかにまざった、オリジナリティのある作品で楽しめました。