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【読書レビュー】転落(永嶋 恵美)


■あらすじ

ホームレスになってしまった「ボク」は、食料を探していた神社で、小学生の麻由から弁当を手渡される。
巧妙な「餌付け」の結果生まれた共犯関係は、運命を加速度的に転落へと向かわせる。
見せ掛けの善意に隠された嫉妬・嘲笑・打算が醜くこぼれ落ちるとき、人は自分を守れるのか!?
驚愕の心理サスペンス。


■感想

永嶋 恵美さんの作品は初読で、本作は3部構成となっています。

【第一部 教唆】
ホームレスの「ボク」と、ボクを餌付けする小学生の麻由。
「ボク」は麻由に死んだ妹の面影を見つけて、ごはんをもらう代わりに麻由の残忍な遊びに付き合うことにします。
しかし麻由が遊びに飽きたとき、「ボク」と麻由の奇妙な共犯関係に大きな変化が訪れるのでした。

【第二部 隠匿】
とある病院の調理室勤務の「私」と、夜遅くに突如として現れた来訪者の柿原 知実。
人を殺したと話す知実を、「私」はなし崩し的に匿うことになります。
世間的には「私」にとって知実は憎むべき相手にも関わらず、彼女が知実を匿ってしまった理由とは。

【第三部 転落】
預かった甥を事故で亡くした「私」と、幼い我が子を死なせてしまった飯田 律子。
病弱な我が子を1人で面倒を見続けた結果ノイローゼ気味になっていた律子に、「私」は自分が律子の子を殺したことにすればいいと囁く。
正常な判断ができず、「私」の提案を受け入れた律子。
自分の思惑通り殺人者となった「私」に待ち受けていた『転落』の始まりとは。

3部それぞれで主人公が変わりますが、物語は全て繋がっています。

第一部、第二部と続きが気になって読み進め、いざ真相が明らかになる第三部では少々肩透かし(今までの盛り上がりに比べて真相の意外性や経緯が弱かった)を食らいましたが、十分に楽しめた作品でした。

人間の本性や心の裏側がたっぷりと描かれたいわゆる『イヤミス』作品なので、読み手を選ぶかもしれません。