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【読書レビュー】一橋桐子(76)の犯罪日記(原田 ひ香)

■あらすじ

老親の面倒を見てきた桐子は、気づけば結婚もせず、76歳になっていた。
両親をおくり、年金と清掃のパートで細々と暮らしているが貯金はない。
このままだと孤独死して人に迷惑をかけてしまう。
絶望していたある日、テレビを見ていたら、高齢受刑者が刑務所で介護されている姿が目に飛び込んできた。
これだ!
光明を見出した桐子は「長く刑務所に入っていられる犯罪」を模索し始める。


■感想

明るい文面ながらも、現代の高齢者(若者にだってあり得る)が抱えるであろう問題を描いた作品。
原田 ひ香さんの作品は初めて読みますが、本作はあらすじを見て、読むと即決しました。

桐子が73歳の頃、モラハラ夫が他界して晴れて自由の身となった親友で同級生のトモと二人暮らしを始め。
古い一軒家に二人で暮らす生活は決して裕福ではなかったものの、月に一度の贅沢で、ホテルのビュッフェを二人で楽しむ。

年を重ねてもまるで女学生の頃のように、明るくて楽しい小さな幸せを詰め込んだようなトモとの時間を過ごしていた桐子でしたが、二人暮らしを始めて3年、トモが他界してしまいます。

突然一人ぼっちになった桐子。
今は唯一の親族となった姪や甥ともすっかり疎遠になっていて、孤独をひしひしと感じているときにテレビで見た高齢受刑者の話。

ごはんが出て、寝るところがあって、介護してくれる人がいて。
その高齢受刑者の扱いが、桐子には輝いて見えました。

そこから桐子が考えるのは、いかに長く刑務所に入っていられる犯罪を犯せるか、ということ。
今まで真面目一辺倒で生きてきた桐子ですが、初めて犯罪を犯そうとします。

万引き、偽札作り、闇金の手伝い、詐欺師との関わり、そして誘拐。

誘拐は失敗に終わり、様々の事情を鑑みて不起訴となったものの、その出来事は桐子の人生をさらに悪い方へと向かわせます。

誘拐の件で、このまま住み続けられるかどうか分からなくなってしまった賃貸の家。
誘拐の件をきっかけに、清掃のパートの仕事を完全に失ってしまい。

これからどうやって生活するのか、どうやって生きていくのか考えるのに疲れた桐子のもとに嘱託殺人の話が舞い込んで来て、そこからストーリーは終盤に向けてクライマックスを迎えていきました。

桐子の場合は最後は希望がある終わり方となりましたが、現実はきっともっと厳しいのでしょう。

それでも血縁関係や法的な関係だけが全てではない。
赤の他人同士でだって繋がり、支え合うことができる。

いつか死ぬまで生きていく人生の中で、その生き方を考えさせられる作品でした。