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【読書レビュー】竜と流木(篠田 節子)

■あらすじ

水の守り神とも称される愛くるしい両生類ウアブに魅せられ、太平洋の小島ミクロ・タタに通う若き研究者ジョージ。
だが、インフラ開発で高級リゾートの人工池に棲息の場を移されたウアブに、大量死が起こる。
それは悪夢の幕開けだった――。
禁忌に触れた人類を生態系の暴走が襲う、圧巻のバイオミステリー!


■感想

篠田 節子さんの作品は初読となります。
あらすじとタイトルに惹かれて購入しました。

人間の便利さのために壊される自然。
人間の身勝手さで狂わされる生態系。
それをありありと見せつけてくるようなストーリーでした。

どれだけ調査をしようとも、どれだけ研究をしようとも、自然のあるべき姿に人の手が介入した時点で何が起こるか分からない。
始めることは簡単でも後始末はなんだって大変な労力が必要で、完璧に片をつけるなんてことは不可能に近い。

他の生物にはない賢さがあるがゆえの人間の傲慢さを、丁寧に描いた作品だと思いました。

バイオミステリー、生物パニックミステリーとしておもしろい本作。
おすすめできる作品ではありますが、強いて難点を挙げるとするなら、登場人物たちが魅力に欠けていること。
割りと色んな人物が出てきますが、誰も彼も大して印象に残るほどの存在感ではありません。
主人公のジョージですら、「なんだか終始あわあわしているだけだったなあ」という印象でした。

まあそのお陰で、バイオミステリーとしての恐怖感が増したとも考えられますね。

決してハッピーエンドではないですし、なかなか残酷な描写も多いので読む人を選びそうな作品ではありますが。
おもしろさはあるので、苦手意識がない方は、ぜひ機会があれば読んでみてほしいです。