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【読書レビュー】吾輩はシャーロック・ホームズである(柳 広司)


■あらすじ

ロンドン留学中の夏目漱石が心を病み、自分をシャーロック・ホームズだと思い込む。
漱石が足繫く通っている教授の計らいで、当分の間、ベーカー街221Bにてワトスンと共同生活を送らせ、ホームズとして遇することになった。

折しも、ヨーロッパで最も有名な霊媒師の降霊会がホテルで行われ、ワトスンと共に参加する漱石
だが、その最中、霊媒師が毒殺されて……。

ユーモアとペーソスが横溢する第一級のエンターテインメント。


■感想

夏目漱石が自分をシャーロック・ホームズだと思い込む!
フィクションとノンフィクションの登場人物が交じり合うなんておもしろそうですよね。
ということで購入を決めた一冊となります。

たまたまタイミング良く本物のホームズが不在の際に、ワトスンの傍で"ホームズ"として振舞うことが許された夏目。
まるで本当のホームズの日常のように事件に遭遇し、それを解決していくというストーリーとしては本家と同じような流れです。

しかし、今回の"ホームズ"はなんといっても夏目なので、どうにもかっこよく決まらない。笑
夏目の思い込みはやや周囲に迷惑をかけるものの、なぜかコミカルになってしまう彼の言動にワトスンもなぜか付き合ってしまいます。

ちなみにこの夏目、"ホームズ"になる前はなんと"猫"になっていました。
ここで本作のタイトルと夏目漱石の著書『吾輩は猫である』の絡みが出てきましたね。おもしろい。

本作はところどころシャーロック・ホームズシリーズと夏目漱石の著書絡みの話が出てくるので、事前に読んだことがある方ならより一層楽しめるのではないでしょうか?
(わたしは薄くホームズシリーズを読んだ程度でしたが、それでも楽しめましたよ!)

偽物ホームズとワトスンがドタバタしながらひとまず事件は解決を迎えるのですが、最終的な推理で事件を解決に導いたのは本物ホームズです。
本物ホームズは現地におらずとも事件を解決してしまうんですね。さすがです。

ストーリー後半で意図せず阿片を摂取してワトスンが錯乱してしまうのですが、そこになかなか衝撃なシーンがありました。
結局その衝撃的な事象は回収されきれなかった(と思う)ので、その事象が真実かどうかは不明なままですが…。

ホームズシリーズとも夏目漱石の著書とも違う、第三のホームズまたは夏目漱石の小説といった立ち位置で楽しめる作品でした。