■あらすじ
「黒髪の乙女」にひそかに想いを寄せる「先輩」は、夜の先斗町に、下鴨神社の古本市に、大学の学園祭に、彼女の姿を追い求めた。
けれど先輩の想いに気づかない彼女は、頻発する"偶然の出逢い"にも「奇遇ですねえ!」と言うばかり。
そんな二人を待ち受けるのは、個性溢れる曲者たちと珍事件の数々だった。
■感想
森見 登美彦さんの小説は初めて読みます。
とは言っても『有頂天家族』をアニメで観ていて作風はなんとなく知っていたので、全くの初見というわけではありません。
そして本作、森見さんの作品であることを裏切らないおもしろさでした!
黒髪の乙女を想うあまり、外堀から埋めていこうとする半ば(むしろ立派な?)ストーカーと化している先輩。
乙女にお近づきになるためにあれこれ画策する先輩ですが、どうにもスムーズに事が運ばない。
それは乙女がちょっぴり風変りで天然なところがあるせいもありますが、それより乙女と先輩を取り巻く人々が奇天烈すぎるのが原因。
奇天烈な人々が集まれば、そりゃもう珍事件も勃発するわけで。
間違いなくファンタジー小説であるはずなのに、「現代でもこういう不思議なことがあるかもしれない」となぜか思えてしまうこの独特な世界観は、森見さんならではなんだと思えました。
あと、舞台が京都っていうところも、この世界観を描く上で大事な要素なんでしょうね。
文章(登場人物の言い回し)はかなりコミカルで、レトロな雰囲気が感じられます。
人によってはこれを「読みにくい」「面白くない」と思うのでしょうから、万人受けする作品ではないのでしょうね。
ただ、恋愛小説として読むのではなく、恋愛ありのコメディ小説と思って読めばおもしろい作品だと思います。
森見さんの作品で、次は『四畳半神話体系』も読んでみたいと思いました。